「高校の勉強は難しい」「中学時代には成績が良かったのに、高校に入った後に成績が下がってしまいました」という声をよく聞きます。

とくに高校受験がうまくいった生徒はそうなりやすい傾向にあります。高校受験がうまくいったということは、たいてい、自分の実力からすると受かるかどうか微妙な高校にうまく合格したということですよね。しかし、うまい具合に合格できたその高校には、もっと上の高校を狙えたけど安全策をとって下のランクの高校を受けた人もいます。ですから、高校受験がうまくいった生徒は、中学校では成績上位だったのに、いきなりごく普通かそれより下の層に位置付けられるわけです。

つまり、高校に入って成績が下がるのは、「高校の勉強が難しいから」というのも一因ですが、それ以前に「自分より上位の層がたくさんいるところに入ったから」という要因があるのです。

これは、成績の下降は必ずしも学力の下降を意味しない、ということです。どうでしょう? これ、朗報に聞こえますか? 周囲の生徒の頭が良いのであって、自分の学力が低下したわけではないのですから、安心していいように思われるかもしれません。

しかし、よく考えてみる必要があります。中学校では自分は成績上位だったということは、学校の授業は自分の学力より少し易しめに行われていた可能性が高いのではないでしょうか? 少し易しめなので、簡単に理解することができた。そのため、特に一生懸命勉強しなくても成績上位をキープできた。そして、そういった意識のまま高校に入学した生徒が痛い目にあうのです。もともと高度な内容なのに、自分より学力のある生徒がいるなかで行われる授業なので、中学校までのようにはいきません。授業に必死でついていこうとしないと、すぐに振り落とされてしまいます。

入学後だいたい3ヵ月くらいあれば、学力でのクラス内の位置付けが見えてきます。人の順応性はけっこう高いもので、高校入学後に成績が下降しても「ああ、頭の良い人たちがたくさんいるなぁ」と考えて、自分のその位置に順応してしまいます。そして、授業の中でもわからないことがあることに慣れてしまって、どこがわからないかを把握できなくなります。中学校では授業でわからないことがあれば調べたり先生に質問したりしていた生徒でも、あまりに頻繁にわからないことと遭遇すれば、それに慣れてしまうものなのです。

どこがわからないかを把握できなければ、わからないことだけを狙って解決することは不可能です。そこで、ごくまれにやる気を出して「基礎から始めるぞ!」と思います。しかし、先生が授業で説明してくれたときにわからなかったことを自分ひとりで解決するのは非常に困難ですし、時間がかかります。そうこうしているうちに、次のテストがやってきます。基礎から全部やり直しているとそのテストの範囲までは到達できないので、テスト前はとりあえず丸暗記で解決しようとします。しかし、そんな勉強で対応できるはずもなく、その結果はいつも通り惨敗。「あー勉強しても無駄かなぁ」となって…………。

つらい想定を書いてみましたが、実はこれでも比較的マシなケースだと思います。多くのケースでは、「基礎から始めるぞ!」と思ってもそれを1ヵ月継続することもできないでしょう。高校生は忙しいですから。授業、宿題、部活、行事、それに伴う人間関係。「うちの子はゲームばかり、スマホばかり」という声を保護者の方から聞きますが、これだけ忙しければ「好きなことを好きなだけやりたい!」という気持ちになるのも当然だな、というほど物理的にも精神的にも忙しいのが高校生活です。大人になってしまうと大きな出来事のない1ヵ月というのは普通にありますが、高校生活には大きな出来事(たとえ大人から見ると些細なものでも)が目白押しです。そのなかで苦手になってしまった勉強を継続するのは超人的な意志力が必要です。

「わからないことがあって当たり前」の授業では、ほとんどのことが身につきません。学校の授業が無駄になってしまいます。「授業内容のほとんどが理解でき、わからないことがあったらそれを把握して質問などで解決できる」という状況と、「授業内容の多くが理解できず、わからないことがあっても当然なので、それを解決しようともしない」という状況。たとえスタート時点で同じ学力であったとしても、数か月で恐ろしいほどの差がつくのは明白です。しかも実際には、スタート時点ですでに差がついているのです…。

まずは「わからないことがあって当たり前」という状況にならないうちに手をうつことが重要です。そして、もしそういう状況になってしまったら、できるだけ早く対処するしかありません。日に日に差がついていくのを止めるには、「いま」がんばらないといけないのです。