古典文法の問題です。

【問題文】思はむ子を法師になしたらむこそ心苦しけれ

【問】太字になっている部分「けれ」の文法的説明として正しいものを一つ選べ。

①助動詞の已然形

②動詞の已然形

③形容詞の一部

この問題、たいていの生徒は、①を選んでしまいます。選択肢があればまだマシですが、選択肢なしで答えさせると、初見ではほぼ100%の生徒が助動詞「けり」の已然形と答えます。

しかし、正解は③です。シク活用の形容詞「心苦し」は、未然形=こころぐるしく、連用形=こころぐるしく、終止形=こころぐるし、連体形=こころぐるしき、已然形=こころぐるしけれ、という形で活用していきます。問題文では「けれ」だけが太字になっていますが、実はこれ、「心苦し」という形容詞の已然形[こころぐるしけれ]の一部なのでした。

 

さて、今回の話はここからです。

上述したようにほぼ100%の生徒が初見では間違えるこの問題。私は上のような解説を毎回のようにするわけですが、ここで、「なるほど!」という反応をしてしまう生徒が少なからずいます。もし①や②を選んで間違えたのであれば、上の解説を聞いても納得してはいけません。そこで納得してしまう生徒は、一週間後に同じ問題を出すと間違えます。一度納得したのに、間違えるんです。それは自分が選んだ選択肢がなぜ誤答なのかを理解していないからです。

①を選んだ場合、全くのあてずっぽうで①を選んでいるのではなく、[けれ]といえば過去の助動詞「けり」という思考回路ができているので、ある程度の自信をもって①を選んだはずです。しかし「正解は③である」と言われるのです。ここで上位にいくような生徒であれば「なるほど、③が正しいというのは分かりました。でも、なぜ①はダメなんですか?」とすぐに聞き返してきます。普通はそうでしょう。自信をもって①だと答えたのに「そうじゃない!」と言われれば、「なぜ!?」と思うはずなんです。そうして、①が誤答である理由を説明されて(ここではその理由説明は割愛します)それが誤答である理由を理解したならば、同じ間違いはもうしません。[けれ]といえば過去の助動詞「けり」が多いけどこれこれの場合はそうじゃないという、以前より精緻な思考回路に組み変わるからです。次に間違えないために納得すべきは、③が正解である理由と、①や②が誤答である理由なのです。

 

上の話を一般化していえば、「Aという選択肢が正解である理由が、そのままBという選択肢が不正解である理由になるとは限らない」ということなんですが、これを理解できていない生徒がけっこういます。私がみてきた経験でいえば、doの生徒の5割くらい(指導当初ですよ)、高校生全体でいうと8割近くはわかっていないのではないでしょうか。

たいていどこの高校でも、英文法の総合問題集が副教材となっていますが、そこには「これがこういう理由で正解である」とは書いてあるけれども、他の選択肢が誤答である理由はほとんど書いてありません。まあ、無理なんです。それを書こうと思ったら、ページ数が4倍以上になってしまいますから。ただでさえ200ページ以上もある問題集が800ページになったら、値段も高くなりますし手を出す気にもならないのできっと売れないでしょう。

そのような誤答の理由が書かれていない問題集(つまり普通の問題集)で力をつける勉強をするならば、条件が二つあります。

ひとつめ。「Aという選択肢が正解である理由が、そのままBという選択肢が不正解である理由になるとは限らない」ということを理解できていること。残念ですが、上述した通り、この条件を満たしている生徒は少数です。

ふたつめ。誤答である理由が気になったとき、それを説明してくれる指導者が周囲にいること。学校に先生がいらっしゃいますから、この条件は多くの場合、満たされていると思われるかもしれません。しかし、実際、学校の先生に質問しに行ける生徒がどれだけいるかを考えると、この条件もクリアできていない場合が多いといえます。

英文法の問題集を引き合いに出しましたが、他の教科でも事情は同じです。どの教科でも共通するからこそ、この条件を満たしているか否かが、学力全体を左右するのです。

予備校doには「正解の理由を説明されただけで納得してはダメだ」と口うるさく言う講師がいます。そして、これ以上ないほど質問のしやすい環境が整っています。たとえ質問しに行かなくとも、テストの個別添削を受けるときに「この選択肢が間違っている理由は?」と訊かれます。嫌でも、誤答である理由を考える習慣が身についていきます。その習慣が、同じ間違いを阻止し、正解できる思考回路を作っていくのです。